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2007.12。公開開始。 このブログは み羽き しろ の執筆活動の場となっております。 なお、ブログ中の掲載物につきましては「無断転載・無断使用を禁止」させていただきます。
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耳朶を擽るような声を断ち切るようにスライド式携帯を閉じた。
控えめに言葉を探すアルトの甘さ。
そう遠くない日に。
すべては自分の物になる。
そう思っているのに…。
時々、底なしの闇に引き摺り込まれる夢を見る。
血に塗れた両の手で、あの白い躰を思う存分穢す夢だ。
甘い口唇を味わい尽くし、白い肌に紅の花を咲かせまくり、細い脚を思い切り開かせ…。
まるでハイエナのように震える果実を貪り喰らう。
そんな夢を。
この頃、よく見るようになった。

「限界も近いな…。」
あの異常な軽さを実感していなければ、すでに手中に収めていただろう。
鷹久の、あの窶れ果て凍えた躰を抱き締めたりしていなければ、今頃はきっと、睡眠時間を削ってでも毎日貪っていた筈だ。
「まったく、タイミングの悪い。」
本当ならば、出逢った当初に略奪していた筈だったのだ。
あづみの手から。
それが。
「アメリカのバカが…経済対策をドジりやがって…。」
丁度、椿が鷹久と出逢った時、アメリカ経済の急激な悪化で界桜グループも混乱していたのだ。被害を最小限に抑え込む為、椿も裏から表から打てる手をすべて打たなくてはならない状態で、暫く身動きが取れなかった。
それさえなければ…。
今更だが。

「立花。」
椿は再び助手席の秘書を呼んだ。
『はい。』
「鷹久たちの衣類を揃えたい。何処か良い店はないか。」
『それなら、ユニシロは如何ですか?』
「ユニシロ?」
『ええ。肌着からコートまで。頭のてっぺんから足の先まで殆ど揃います。価格もリーズナブルですし、最近は若手デザイナーを何人も起用してファッション性の高い質の良い物が揃っていると聴きます。何より、あの三人なら高級ブランド店に連れて行った時点で吐きますよ。きっと。』
「…。」
『貸し切りますか?』
「ああ、そうだな。極上天使の体調もあるだろうから、午前中貸し切ってくれ。」
『わかりました。』
「ところで、何処にある店だ?」
『桜宮(さくらのみや)大通です。』
「帝都中央か?」
『はい。西の大通。東京で言うと銀座ですか。』
そんな店、あったか? とは、聞かなかった。
大体、椿がいつもスーツをオーダーメードする店とて桜宮大通にあるのだ。言うまでもなく一流ブランド店が揃っている。

っていうか…。
「俺の土地に建ってるのか?」
『…。』
今頃気付かないでください。と、いう言葉を立花は必死で飲み込んだ。
財産管理にかなりの不安が残る椿である。
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