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2007.12。公開開始。 このブログは み羽き しろ の執筆活動の場となっております。 なお、ブログ中の掲載物につきましては「無断転載・無断使用を禁止」させていただきます。
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驚愕に見開かれた翔一郎の眼元が、フと、やわらかなカーブを描く。
なるほど、どうやらかなりの情報を得ているらしい。
尤も、匡雅の言動はそのまま日本という国すらも動かしてしまうのだから、隠密行動には限度がある。まして翔一郎の力を以てすれば、匡雅の周辺で起こる些細な出来事ですら一日と待たずに正確な情報として手に入るだろう。

「あのコじゃないよね?」
意味深な視線が匡雅の瞳を覗き込む。やはり、翔一郎が手にしている情報は正確なものなのだ。匡雅が囲ったのは、三兄弟なのだから。
ただし、愛人として匡雅が手元に置いているのは長男だ。だから、翔一郎の言う『あのコ』というのは末っ子の事だろう。
「ええ。」
隠しても、今更だ。無駄な事を匡雅は好まない。
「じゃ、あの魔性だ。」
益々翔一郎の笑みは深くなる。
「…。」
万人が平伏す美貌が艶然と笑う。
魔性というなら、この翔一郎とてその部類に入るだろう。
ただ、老若男女を問わず虜にしてしまう翔一郎と違い、男のみを虜にしてしまう彼は特殊な魔性と言える。

女は、本能的に彼を避ける。
避けねば、比べられるからだ。
自ら磨き上げた美を誇る女たちにとって、男である彼と見比べられるだけでも不快なのに、更に勝ち目がないとくればその存在は恐怖だろう。

そして、火に飛び込む蛾のように、男たちは本能で彼に惹かれてしまう。
匡雅が、そうであったように…。

「垂れ流しだよね。フェロモン。」
「…直接会ったんですか?」
「否。でも、写真からさえ溢れ出してた。あれは、本人に自覚がないだけにキツイね。」
「ええ。だから、周囲には信頼出来る者しか置いていません。」
「ふぅん。だから角井であり遠野なんだ。」
「…。」
「兄、ぞっこんだね。」
「どうでしょう…。ただ、他人(ひと)には渡したくないですね。」
「それを『ぞっこん』って言うんじゃないの? ああ、溺愛、か。」
言ってから、コロコロと翔一郎が笑う。匡雅には似合わない溺愛という言葉が、妙に笑いの壺を刺激したらしい。美しいが容赦のない笑みだ。
匡雅以外の人間には恐怖しか与えないだろう。

「お披露目は?」
「予定はありません。」
「隠せば益々危険だよ?」
「アレは堅気です。しかも子供だ。」
「匡雅兄の愛人に、そんな常識を当て嵌めるのは無理があるよ。」
「まだ、愛人にはしていませんが。」
「兄…らしくない。」
「…。」
「護ってあげるよ? その価値さえ認めれば。」
「…考えておきましょう。」
「うん。アレは、匡雅兄の命取りにもなり兼ねない。大事なら、早くね。」
「…。」

意味深な視線がじっくりと琥珀の瞳を覗き込む。
深い翠の視線は、それだけで見る者の心を鷲掴みにする。


「待ってるよ。」
その一言で、翔一郎は踵を返した。


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