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2007.12。公開開始。 このブログは み羽き しろ の執筆活動の場となっております。 なお、ブログ中の掲載物につきましては「無断転載・無断使用を禁止」させていただきます。
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複雑な表情を浮かべた遠野と海斗を乗せたエレベーターは、護衛である二人の男と共に静かに最上階へと向かっていた。
だが。正直、海斗は組事務所に帰りたい。
車内で最後に聞いた遠野の話があまりに衝撃的過ぎたのだ。

「サヴァン症候群という病気を知っているか?」
「サヴァン…確か、自閉症の患者さんの中に時折存在する…。」
「そうだ。別名『天才病』とも言う。ひとつの事に突出した才能を発揮する脳の病気だ。」
(注:サヴァン症候群は病気ではありません。病気というのはあくまで遠野個人の主観です。また、全てのサヴァン症候群の方が自閉症とは限りません。)

例えば分厚い電話帳に書かれている全てを丸ごと記憶してしまったり。
一度見ただけの風景や建築物を正確に描いてみたり。

「三兄弟の場合は自閉症ではない。だが、サヴァン症候群の兆候がみられる。恐ろしいほど記憶力が良いんだ。」
「そんな事って…あるんですか?」
「解らん。サヴァンの場合はひとつの事に突出するが、三兄弟は記憶力という点で突出している。見たもの、聞いたものを正確に、ほぼ完ぺきに覚えてしまうようだ。ある時…。」
まだ、三兄弟と出逢ったばかりの頃。三人の前で椿がアラブ系の友人と電話で話をしていた事があった。その会話を、末っ子の秋典が丸ごと記憶してしまったらしく、数日後、椿の前でその時のアラビア語を見事に発音して意味を聞いて来たのだ。
その場にいた誰もが絶句した。
しかも。
「三人が三人共見事に発音してくれた。それで、研究者を呼んで簡単なテスト検査をしてみたんだ。」
「それでサヴァン症候群だと?」
「正確には違うだろう。ただ、それに近いものらしい、としか解らない。」
凄まじい記憶力を持つ兄弟…。
でも、それだと。
「待ってください。でも、末っ子は…確か精神的には保育園児だと…。」
「そうだ。しかし海斗。記憶と精神は近くて遠い。同じではないよ。秋典さんは、やる事なす事保育園児だが記憶力が良い。ただそれだけの事だ。」
「それだけって…。これから三人の天才児を相手に、衣食住(多分そうなるだろう)生活を共にする俺の身にもなってください。」
「お前なら大丈夫だ。」
「何がです。」
「三兄弟はとても性格が良い。誰からも好かれるタイプだ。お前もきっと気に入るし、彼らもお前を気に入るだろう。」
「そんな安易な事を…。」
「ふふ。それで、だ。」
「…。」
「最後の注意だが。」

三人はとても特殊な環境で生活している。
それに慣れてくれ。

「特殊…。」
「行けば解る。」

帰りたい…。
海斗は切実に思った。
三人の天才児。
しかも、その長男は絶世の美貌を誇り、あの椿の愛人だという。

「俺に…どうしろって言うんですか…。」
エレベーターに乗り込む際、ぼそりと呟いた海斗の声を、遠野はあっさり無視して最上階へ向かった。
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