2007.12。公開開始。
このブログは み羽き しろ の執筆活動の場となっております。
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惚れた相手の肌に自分を刻みつけたいと願うのは、万国共通、男のロマン…なのだろう。まぁ、女にも言える事かもしれないが。
当然、椿にもそんな願いはある訳で。
椿は鷹久と出逢った時、コレは自分のものだと直感し、近々手に入れるつもりであづみの依頼を引き受けた。
『あのコを護って。』
タチの悪い連中に目を付けられているみたいなの。
厄介な事になりそうで怖いのよ。
普通、椿がパトロンとなっているあずみの店のバイトに手を出そうなど、誰も思わない。椿は死体処理場まで持っている男だ。その男の息のかかったモノに手を出すなんて、殺してくださいと言っているような物なのだ。繁華街をウロつく無知で血気盛んなチンピラだとて、そこまで命知らずではない。
だが、それはあくまで裏社会を知っている者にとってであって、相手が堅気となると違ってくる。裏を知らない分、時にヤクザ者よりタチが悪いのだ。
椿があづみの依頼を受けて数ヵ月後、やはりというか何というか、あづみの予感は的中した。
事もあろうに、鷹久の暮らすアパートから弟たちを拉致し、それを人質に鷹久を強姦しようとしたバカが現れたのだ。
無論、鷹久には密かに見張りがついていた為大事には至らなかったが、その事件を機に椿は三兄弟を自分の保護下に置く事を決めた。
あづみも、それに対して異論はなかったようだ。
ただ、椿がマンションやら何やらに湯水の如く大金を使い始めた事には随分と驚いたようだったが、それだとて椿のポケット・マネーであり他人が心配すべき事ではない。
尤も、椿がそこまでするという事は、少なくとも鷹久の運命は決まったようなものである。
あずみは何度も椿に念を押した。
傷つけないで。
強引に事を進めないで。
無理やり縛りつけないで。
三人を引き離さず、幸せにして。
極道相手に何を血迷っているのかと言われそうだが、あづみは本気だった。その言葉に椿は「念書でも書くか?」と言って笑うと、マンションの電話番号を教えたのだ。
「管理室には常に護衛がつく。皆ヘテロ(異性愛者)だ。信頼の置ける者を揃えた。それでも、妙な考えをするヤツが現れたら見せしめとして臓器売買に回すから安心していろ。」
「本当ね?」
「ああ。俺はお前に嘘など吐かん。」
「心配なのよ。あのコ達は純粋過ぎて。怖いの。」
「そのようだな。あそこまで無垢だと、逆に手が出し辛い。まぁ、急ぐ事でもないのでな。じっくり時間を掛けるとしよう。」
本当なら、止めるべきなのかもしれない。
弟のように可愛がっている子供を極道の愛人に推薦したようなものなのだ。
あづみにも当然ジレンマはあった。
だが、鷹久には椿くらいの男でなくては、彼を護り切る事など出来ない。それも動かし難い事実だ。
良くも悪くもあの美貌は男(ひと)を狂気に駆り立てる。鷹久の弟たちを拉致した男だとて、普通の銀行員だったのだ。あづみの店で鷹久を見掛けるまでは。
あの瞳に魅せられて、誰もかれもが我を忘れる姿をあづみは目の当たりにして来た。鷹久にはまるで自覚がないのに、男たちは彼に惹き寄せられ、壊れてゆく。
なぜ、と問われても本人たちには解らないだろう。
それが怖いのだ。
繁華街の外れにある小料理屋。
夫婦二人で営まれる小さな店は、ある日、そこを訪れた男の運命を突然変えてしまう。
たった一人の存在が、多くの男たちの人生を変質させてしまうのだ。関係のない周囲を巻き込んで。
だから、椿に託すしかなかった。
見も知らぬ行き擦りの客の為ではない。そんな連中の運命がどう変わろうと知った事ではない。
ただ、必死で弟たちを護ろうと頑張っている鷹久の為に、あづみは、安全と平穏を約束出来る場所を与えてやりたかった。
懸命にあがき続ける雛鳥の為に、安心して眠れる暖かな巣を用意してやりたかったのだ。
「お願いよ、椿さん。私、もう、何の罪もない子供が大人の勝手で傷つくのは見たくないのよ。」
無理心中の生き残りであるあづみの経験が呟かせる言葉は、酷く重くて、痛かった。
当然、椿にもそんな願いはある訳で。
椿は鷹久と出逢った時、コレは自分のものだと直感し、近々手に入れるつもりであづみの依頼を引き受けた。
『あのコを護って。』
タチの悪い連中に目を付けられているみたいなの。
厄介な事になりそうで怖いのよ。
普通、椿がパトロンとなっているあずみの店のバイトに手を出そうなど、誰も思わない。椿は死体処理場まで持っている男だ。その男の息のかかったモノに手を出すなんて、殺してくださいと言っているような物なのだ。繁華街をウロつく無知で血気盛んなチンピラだとて、そこまで命知らずではない。
だが、それはあくまで裏社会を知っている者にとってであって、相手が堅気となると違ってくる。裏を知らない分、時にヤクザ者よりタチが悪いのだ。
椿があづみの依頼を受けて数ヵ月後、やはりというか何というか、あづみの予感は的中した。
事もあろうに、鷹久の暮らすアパートから弟たちを拉致し、それを人質に鷹久を強姦しようとしたバカが現れたのだ。
無論、鷹久には密かに見張りがついていた為大事には至らなかったが、その事件を機に椿は三兄弟を自分の保護下に置く事を決めた。
あづみも、それに対して異論はなかったようだ。
ただ、椿がマンションやら何やらに湯水の如く大金を使い始めた事には随分と驚いたようだったが、それだとて椿のポケット・マネーであり他人が心配すべき事ではない。
尤も、椿がそこまでするという事は、少なくとも鷹久の運命は決まったようなものである。
あずみは何度も椿に念を押した。
傷つけないで。
強引に事を進めないで。
無理やり縛りつけないで。
三人を引き離さず、幸せにして。
極道相手に何を血迷っているのかと言われそうだが、あづみは本気だった。その言葉に椿は「念書でも書くか?」と言って笑うと、マンションの電話番号を教えたのだ。
「管理室には常に護衛がつく。皆ヘテロ(異性愛者)だ。信頼の置ける者を揃えた。それでも、妙な考えをするヤツが現れたら見せしめとして臓器売買に回すから安心していろ。」
「本当ね?」
「ああ。俺はお前に嘘など吐かん。」
「心配なのよ。あのコ達は純粋過ぎて。怖いの。」
「そのようだな。あそこまで無垢だと、逆に手が出し辛い。まぁ、急ぐ事でもないのでな。じっくり時間を掛けるとしよう。」
本当なら、止めるべきなのかもしれない。
弟のように可愛がっている子供を極道の愛人に推薦したようなものなのだ。
あづみにも当然ジレンマはあった。
だが、鷹久には椿くらいの男でなくては、彼を護り切る事など出来ない。それも動かし難い事実だ。
良くも悪くもあの美貌は男(ひと)を狂気に駆り立てる。鷹久の弟たちを拉致した男だとて、普通の銀行員だったのだ。あづみの店で鷹久を見掛けるまでは。
あの瞳に魅せられて、誰もかれもが我を忘れる姿をあづみは目の当たりにして来た。鷹久にはまるで自覚がないのに、男たちは彼に惹き寄せられ、壊れてゆく。
なぜ、と問われても本人たちには解らないだろう。
それが怖いのだ。
繁華街の外れにある小料理屋。
夫婦二人で営まれる小さな店は、ある日、そこを訪れた男の運命を突然変えてしまう。
たった一人の存在が、多くの男たちの人生を変質させてしまうのだ。関係のない周囲を巻き込んで。
だから、椿に託すしかなかった。
見も知らぬ行き擦りの客の為ではない。そんな連中の運命がどう変わろうと知った事ではない。
ただ、必死で弟たちを護ろうと頑張っている鷹久の為に、あづみは、安全と平穏を約束出来る場所を与えてやりたかった。
懸命にあがき続ける雛鳥の為に、安心して眠れる暖かな巣を用意してやりたかったのだ。
「お願いよ、椿さん。私、もう、何の罪もない子供が大人の勝手で傷つくのは見たくないのよ。」
無理心中の生き残りであるあづみの経験が呟かせる言葉は、酷く重くて、痛かった。
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