2007.12。公開開始。
このブログは み羽き しろ の執筆活動の場となっております。
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24時間眠らない街、帝都。
宝石箱をひっくり返したような煌びやかな街の中を縫うように走る高速道路。
不夜城と呼ぶには美しすぎる高層ビル群の、その一角を陣取る界桜グループ本社ビルの地下から飛び出したメルセデスは、黒塗りの護衛車を振り切る勢いで郊外へとひた走る。
メルセデス・ベンツ・SLR・マクラーレン・ロードスター。
国際A級ライセンスを持ち、車のコレクションを趣味のひとつとする翔一郎の愛車の中の一台だ。スウィング・ウィング・ドアの滑らかな動きに一目惚れして購入したものの、自ら運転するのはこの夜が初めてだ。
本当は、匡雅兄を隣に乗せるつもりだったのに…。
愛車のメタリックな輝きを夜の帳に散らばる星屑の一つに変えた翔一郎は、溜息まじりに右の助手席に視線を落とした。匡雅が乗るはずだったその場所には、今は見たくもない報告書が捨て置かれている。
----戸崎鷹久(トザキ タカヒサ)に関する身辺調査報告書----懇意にしている興信所から今朝届いたばかりの匡雅の愛人に関する報告書に、最初、翔一郎は眼を疑ったものだ。
あの匡雅兄が男を愛人として囲うなんて。何度読み返しても信じられないその報告書に、出社予定などなかった本社ビルで匡雅を捕まえたのが先ほどの事だ。
だが、普段から殺人的スケジュールで動いている匡雅をやっと捕まえたものの、彼にしては珍しく歯切れの悪い対応に、結局不快な思いをするハメになってしまった翔一郎である。
別に、匡雅が男の愛人を持ったところで翔一郎は構わない。何しろ匡雅はSEXをただの排泄行為と言い切り、要は突っ込めればそれでいいのだと男でも女でも相手にしてきた。勿論、相手はいずれも最高級ではあったが、それでも一時間20万の支払いで済ませるような関係がすべてだったのだ。
それが、愛人を『囲った』という。
しかも、SEXの相手には現金での支払い以外花一輪買い与えた事のない匡雅が、その愛人には超高層マンションの最上階フロアを丸ごと買い与えたという。本人の話では名義は匡雅になっているらしいが、そんな事実は大した事ではない。問題は匡雅が自分の居住空間に他人を住まわせた事。その上、信頼のおける部下を護衛としてつけた事。いずれもが今までの匡雅からは想像できない事なのだ。
「くそっ。」
本気だろうか。
匡雅に対して恋愛感情など持ち合わせてはいないが、それでも口惜しさが言葉となって迸る。
光と闇。
翔一郎と匡雅を知る者は皆、二人の関係をそう呼ぶ。
コインの表と裏だと。
そう呼ばれるように、生まれた時からそれぞれの道は決まっていた。
翔一郎は光の世界で君臨すべき存在で。
匡雅は闇の世界の覇者となるべき存在で。
けれど、誰よりも傍にいた二人だった。
親兄弟よりも、二人が共有していた時間は遥かに長いのだ。
それなのに。
「どうして隠すんだ…匡雅兄…。」
そんなに俺が信じられないのか?
角井や遠野は傍に置いているじゃないか?
誰より先に。
この俺に。
真っ先に紹介してくれてもいいじゃないか。
要は嫉妬なのだろう。
そんな事は解ってる。
「戸崎三兄弟…。」
魔性の男と、その弟たち。
「一体、どこで出逢ったんだ?」
宝石箱をひっくり返したような煌びやかな街の中を縫うように走る高速道路。
不夜城と呼ぶには美しすぎる高層ビル群の、その一角を陣取る界桜グループ本社ビルの地下から飛び出したメルセデスは、黒塗りの護衛車を振り切る勢いで郊外へとひた走る。
メルセデス・ベンツ・SLR・マクラーレン・ロードスター。
国際A級ライセンスを持ち、車のコレクションを趣味のひとつとする翔一郎の愛車の中の一台だ。スウィング・ウィング・ドアの滑らかな動きに一目惚れして購入したものの、自ら運転するのはこの夜が初めてだ。
本当は、匡雅兄を隣に乗せるつもりだったのに…。
愛車のメタリックな輝きを夜の帳に散らばる星屑の一つに変えた翔一郎は、溜息まじりに右の助手席に視線を落とした。匡雅が乗るはずだったその場所には、今は見たくもない報告書が捨て置かれている。
----戸崎鷹久(トザキ タカヒサ)に関する身辺調査報告書----懇意にしている興信所から今朝届いたばかりの匡雅の愛人に関する報告書に、最初、翔一郎は眼を疑ったものだ。
あの匡雅兄が男を愛人として囲うなんて。何度読み返しても信じられないその報告書に、出社予定などなかった本社ビルで匡雅を捕まえたのが先ほどの事だ。
だが、普段から殺人的スケジュールで動いている匡雅をやっと捕まえたものの、彼にしては珍しく歯切れの悪い対応に、結局不快な思いをするハメになってしまった翔一郎である。
別に、匡雅が男の愛人を持ったところで翔一郎は構わない。何しろ匡雅はSEXをただの排泄行為と言い切り、要は突っ込めればそれでいいのだと男でも女でも相手にしてきた。勿論、相手はいずれも最高級ではあったが、それでも一時間20万の支払いで済ませるような関係がすべてだったのだ。
それが、愛人を『囲った』という。
しかも、SEXの相手には現金での支払い以外花一輪買い与えた事のない匡雅が、その愛人には超高層マンションの最上階フロアを丸ごと買い与えたという。本人の話では名義は匡雅になっているらしいが、そんな事実は大した事ではない。問題は匡雅が自分の居住空間に他人を住まわせた事。その上、信頼のおける部下を護衛としてつけた事。いずれもが今までの匡雅からは想像できない事なのだ。
「くそっ。」
本気だろうか。
匡雅に対して恋愛感情など持ち合わせてはいないが、それでも口惜しさが言葉となって迸る。
光と闇。
翔一郎と匡雅を知る者は皆、二人の関係をそう呼ぶ。
コインの表と裏だと。
そう呼ばれるように、生まれた時からそれぞれの道は決まっていた。
翔一郎は光の世界で君臨すべき存在で。
匡雅は闇の世界の覇者となるべき存在で。
けれど、誰よりも傍にいた二人だった。
親兄弟よりも、二人が共有していた時間は遥かに長いのだ。
それなのに。
「どうして隠すんだ…匡雅兄…。」
そんなに俺が信じられないのか?
角井や遠野は傍に置いているじゃないか?
誰より先に。
この俺に。
真っ先に紹介してくれてもいいじゃないか。
要は嫉妬なのだろう。
そんな事は解ってる。
「戸崎三兄弟…。」
魔性の男と、その弟たち。
「一体、どこで出逢ったんだ?」
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