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2007.12。公開開始。 このブログは み羽き しろ の執筆活動の場となっております。 なお、ブログ中の掲載物につきましては「無断転載・無断使用を禁止」させていただきます。
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 白い肌に流れる漆黒の髪は王族の証し。
 海沿いに栄える小国に、ある年、双子の姫が生まれた。
 姉姫は雪白の肌と、漆黒の髪と瞳をもった、それはそれは美しい顔立ちで、数年もすると世界の王侯貴族たちが目の色を変えるほどの美貌を誇るようになっていた。

 だが、双子の妹として生まれた姫は、なぜか姉姫とは似ても似つかぬ顔立ちで、臣下や下級の民たちにすら「姉姫さまのカス」と呼ばれ、両親にすら顧みられる事なく城の一角で育つ事となった。
 なにも好んで醜く生まれた訳ではないのに。
 そんな声もチラホラと聞かれたが、美をもって王族の証しと成す王国では意味がなく、妹姫の存在は人々の記憶から忘れ去られていった。

 海沿いの小国に双子の姫が生まれて十四年が過ぎていた。
 この国では、男子は十八歳で成人とされ、女子は十五歳で結婚が許される。
 すでに姉姫には十歳年の離れた婚約者がおり、家臣からの信望も厚く、美貌の貴公子として知られる侯爵との結婚は国の悲願ともされていた。世界一とも謳われる美貌の姫を手中に収めんとする不届き者から姫を守らんが為、人々はその婚儀がいつ行われるのかと指折り数えて待ち望んでいたのである。

 けれど、人々が切望した姫と侯爵の婚約発表もされぬまま、国は戦火に巻き込まれる。
 南の大国を治める若き王が、美しき姫を手に入れんと大軍を率いて海沿いの小国を包囲したのだ。
 その戦火は瞬く間に大陸全土へと広がり、混乱を極め、後に魔の一年戦争と呼ばれる事となった。
 
 たった一人の姫の為に流された血。喪われた命。
 やがて、海の蒼に映える純白の神殿が女王の血に染まった時、人々の心は絶望に侵食されてゆく。

 魔の一年戦争     終結。

 戦争の発端となった美貌の姫は祖国の城に軟禁され、その婚約者とされた侯爵は国内に潜伏の身となり、事実上海の王国は消滅した。

 そして、生き残った者たちの物語はここから始まる。
 忘れ去られていた一人の姫と共に。



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迎春
今年もよろしくお願いいたします。

風邪ひきました・・・。
新年そうそう屍。
やれやれ。



 たった一人の男の為に、人生のすべてを捧げてきた。
 たった一人の存在の為に、この命のすべてを。

 出会った時は、美しいだけの少年。
 けれど、その内に秘めていた激しさと潔さに、惚れた。

 すべては、たった一人の男の為。
 その存在の為だけに、己は生きてきた。
 生き続けてきたのだ。

 その存在を、目前で喪う絶望。
 魂が絶叫する。

『閣下       っ!!』


 すべては、一瞬の事。




「そうか・・・あの馬鹿者は、死んだか。」
「申し訳ありません・・・。しかし、まだ死んだとは・・・。」
「おぬし。あの城を、あの城下を見て、それでも、そんな事が言えるのか・・・。」
「トレイアス殿・・・。」
「仕方あるまいよ・・・あの馬鹿息子が選んだのだろう。あの小さな姫と共にある事を。」
「神族は、下界で死ぬ事などないと聞いております。」
「あの姫が死なぬ事と、あの馬鹿が生きておる事とは同義にならん。神の聖剣とて、ホンモノの前では意味を成すまい。」
「・・・。」
「それで、これからぬしはどうするのだ。」
「・・・仲間と共に、南を目指します。」
「そうか。」
「はい。」
「南の地で、あの馬鹿を待つのか?」
「はい。」
「ぬしも物好きだな。」
「惚れた・・・弱みでしょう。」
「ははは。あの馬鹿は、人を魅了する事だけには長けておる。」
「お父上の血筋でしょうか。」
「ならば、命を粗末になどすまいよ。妻も子も持たず。ぬしのような男に惚れられても、その力を生かしきってやる事もできず。宝の、持ち腐れのまま・・・。」
「閣下と出会わなければ、私の人生などクズのようなものでした。」
「ドゥオル。」
「閣下と出会えた事が、私にとっては最高の幸運だったのです。」
「ならば、アレの存在も無駄ではなかったという事か・・・。」

「だから、待ちます。待たせていただきます。ずっと。」
「そうか。」



 あれから四年・・・。
 息子の許に集っていた剣闘士達はどうなったのか。
 世界最強の軍団と謳われ、戦う事でしか生きられぬ男達であったのに。
 女子供を連れ、この荒野を今もなお彷徨っているのだろうか。


「お父さま。」
「アイラか。」
「はい。」
「どうした?」
「ライラお姉さまが、また夢にうなされて・・・。」
「ライラが?」
「はい。日に日に悪夢が酷くなっているような。一体、どうしてしまったのでしょう。まさか、アミューン兄さまのように・・・。」
「バカを申すな・・・。」
「でも、お父さま。」

 一体、何が起こっているというのか。
 ライラの不可思議な夢が悪夢に取って代って数日が過ぎていた。

『何かが来ます・・・黒く、悪しきものが・・・。』
 
 悪夢から目覚める度、ライラは怯えたような眼でテントの裂け目から空を見上げる。
 過酷な生活が祟ったのか、最近は寝たきりだ。言葉にはしないものの、もう、椅子にすら座っているのが辛いらしい。

『神よ。どうかその怒りを収め、罪なき子らだけはお護りください。これ以上、幼き命を苦しめないでくださいませ。』

 その祈りの声が、夜明けのテントの中に悲しく響く。
 随分と多くの命が失われた。
 彼らの村だけでなく、この人間世界から。

「ライラ。」
「お父様。」
「泣くな。そなたが泣けば、妹たちも泣く。」
「・・・すみません。」
「最近の夢は、以前のものとは違うようだの。」
「はい・・・酷く、危険を感じるのです。」
「危険?」
「以前の夢に、こんな危機感はなかった。何かが迫ってくる圧迫感・・・酷く息苦しいのです。そして、邪悪な感じが日に日に強くなるのです。」

 何かが、確実にやって来る。
 その予感が、日に日に強くなる。

「ディオネイル兄様・・・。兄様は、わたくしに何かを伝えたくて夢を見せているのでしょうか。」
「馬鹿な。あの愚か者は死んだのだ。」
「お父様。」
「さあ、まだ早い。もう少し眠るのだ。」

 ライラには解っている。
 この父が、一番兄の生存を願っているのだ。
 最愛の妻が残した唯一の子。
 諦められるはずがない。

「ライラ。お前が眠るまで、わしが傍についていてやろう。」
「はい。」
「手を握っていてやろうか。」
「まぁ、わたくしは幼子ではありませんわ。」
「はは。そうであったな。」

 夜明け前の静寂。
 陽が昇れば、また空を見上げるだけの時間が始まるのだろう。
 数年前、贅沢の極みに暮らしていた日々を夢見る余裕もなく、飢えと、渇きに耐えるだけの長い時間が。

 ライラは、ゆっくりと目を閉じる。
 父の視線に護られている時だけは安心して眠れるのだ。

 その時。

「・・・っ?!」
「お父様?」
「蹄の音・・・まさか・・・っ。」



『人間狩りだ     っ!!』


 すべての運命が、今、この瞬間。
 轟音と共に一気に動き出す。



⑧に続く。







 運命の女神が織り上げる、壮大なる運命のタペストリー。
 その綾なす糸に人間の存在を加える事が出来るのはただひとり。

 裁きの女神。
 千年に一度、人間界に舞い降りる美しき少女神。

 世界を裁く。
 その意味において、彼の女神の存在は他神を圧倒するほどに絶大であった。


 それ故に。
 
 運命の女神は待ち続けている。
 裁きの女神が、その白き指先で新たなる糸を紡ぎ上げるその刻を。




「おいでおいでっていうよ。」
「それは、声だけか?」
「うん。」
「何も見えない?」
「うん。でもかたいの。」
「硬い?」
「そお。かたいよ。おっきくてかたいの。」
「大きくて硬い? 触れられるのか?」
「ううん。でもかたくておっきくて。おいでおいでっていうの。」
「・・・触れられないのに、硬いと解るのか?」
「うーん?? よくわかんない。」

 幼子の言葉には脈絡がない。
 追い打ちをかける舌っ足らずの声。

「とーちゃ。も、いーい?」
「あ・・・。」
 とうとう飽きてしまったのか、父であるダグの膝上からスルリと滑り降り、さっさと掘立小屋を駈け出してゆく後姿。尋問拷問は得意技のドールも齢三つの子供相手では勝手が違う。子と、子の父であるダグと三人で時間を掛けて話してみたが、やはり子を呼ぶ声の謎は謎のままだ。
「キュアには、まるで聞き覚えがない声なのだな?」
「ああ、そう言っていた。閣下の声でもないと。だが、空耳ではないとも言っている。」
「男の声が『見つけた』といったのだな?」
「ああ。だから心配している。ヒイに何か起こるのではないかと。」
「硬くて大きな何かがヒイラギを呼んでいる・・・。」
「閣下が、ヒイの名には意味がある、そんな事を言っていた。それに、多分、本当の名付け親は姫様だろう。だとしたら、何が起こっても不思議じゃない。」
 何しろ、もしかするとヒイラギの本当の名付け親は神かもしれないのだ。
 しかも、その溜息ひとつで世界の息の根を容易く止めてしまうほどの力を持つという絶対神だ。
「・・・。」
「なあ、ドール。」
「うん?」
「本当に閣下は死んだのか? あの時、姫様は何処にいたんだ?」
「・・・。」
「お前は、炎の中に消えてゆく閣下を見たと言ったな?」
「ああ。」
「閣下は姫様を助けに行ったんだろう?」
「そうだ。」

 王都に降り注ぐ光の雨。
 その雨は、物質に触れた途端赤黒い炎に姿を変え、あっという間に王都は火の海となった。

「姫様は王妃の間におられたはずだ。俺は、血相を変えて現れた閣下と中庭で偶然会い、すぐに皆とその家族を纏めて国境を超えるように命じられた。」
 その最中にも、城を包む炎は生き物のように壁を這い、草木を焼き払っていた。
 瞬く間に窓の其処ここから火柱が噴き上がり、逃げ惑う人々の悲鳴と叫びに耳を貫かれ、ドールは眼前の光景に一瞬、身が竦んだ。
 地獄だった。
「ガローン邸に使いを出す事もその時言われ、俺はリーゲ(ドールの愛馬)のいる厩舎に走った。」
「そして、厩舎でオレと会った。」
「ああ。お前に閣下の命令だけを伝え、俺は再び閣下の許へ・・・だが・・・。」
 中庭でリーゲから飛び降りた時、ドールの頭上から火の玉が幾つも降って来た。
 それが、炎に巻かれた人間だと知った時の衝撃。
 無我夢中で中に飛び込んだ。
「王妃の間は、真黒な炎に包まれていた。扉の前には、閣下が立ち尽くしていて・・・。」
 あの時・・・。
「ドール。何としても生き延びてくれ。そう言って、閣下は黒い炎の中に飛び込んで行った。」
 その直後、一緒に飛び込もうとしたドールの前で。
「王妃の間は崩れ落ちた・・・。一瞬だ・・・。」
「ドール・・・。」
「あの時。初めて、絶望という言葉の意味を知った。」
 後は、何も覚えていない。
 崩れた足元から階下に落ちて、そこから這いだしたらリーゲがいた。
 それだけだ。


 
 
⑦につづく。
本当は週末のみのつもりで書き始めた。
が、しかし。
予定というのは未定でもあり、日々、何が起こるか解らない。
なので、書ける時に書く。
方針転換。

ちなみに、どうやらお客様がチラホラ来てくださっているようなので、再度注意書き。
あくまでココで書いている文章は下書きです。
shiroは「骨組み→肉づけ→味付け」の順番で文章を書いていくのです。
さらに、同人誌として販売する時はエロシーンがたっぷりと書き足されます(笑)
不特定多数のお客様が来られるネット上でエロシーンを書く事はありません。
チラ書きはしますけどね。

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