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2007.12。公開開始。 このブログは み羽き しろ の執筆活動の場となっております。 なお、ブログ中の掲載物につきましては「無断転載・無断使用を禁止」させていただきます。
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椿邸の土間を含む玄関ホールは広かった。
一般家庭のリビングがすっぽり入ってしまうほどの広さだろう。黒くて、艶のある土間から続く僅かな段差のある玄関フロアもまた真っ黒で、海斗は上下の感覚を失いそうになる。
「どうぞ。」
伊達に勧められ、真っ黒なスリッパに履き替えると遠野の後に続く。広い廊下の床は毛足の長い絨毯が敷き詰められており、その毛足の密集具合いから最高級の日本製であると海斗は確信した。大の男が乗っても、絨毯は僅かな窪みすら残さない。
高い天井を見上げると、埋め込み型の蒼い照明。
「まるで海の底だな…。」
海斗がポツリと呟くと、遠野が意味深な笑みを浮かべ、伊達は苦く笑った。

長い廊下の左側にドアが三つ並んでいる。
セキュリティ・ルームとトイレとバス・ルーム。
この三つは主に警護班が利用しているらしい。廊下の奥には分厚いドアがあり、その向こう側が三兄弟のプライベート・ルームなのだと伊達が説明してくれた。因みに、この分厚いドアは手榴弾を投げ込まれてもビクともしないそうだ。
リビングは、このドアの手前にある。廊下の右側だ。出入り口は二か所。どちらも左右開きの扉で、奥の扉は分厚いドアの間近に作られていた。

さっきから、妙な音がする。
音楽のような。鳴き声のような。
なんだろう。
頻りに首を傾げる海斗に気付いても、遠野からの説明はない。
何やら愉しんでいる雰囲気さえある。
「海斗。」
「はい?」
「何を見ても、何が起こっても、決して大声を出すな。いいな?」
「あ、はい。」
どうやら、このリビングには大きな秘密があるらしい。

コンコン。

伊達のノックと共に玄関に近い扉が開く。
途端、あの妙な音がハッキリと聴こえて来た。

「…え…?」

驚きに見開かれた海斗の視線の先。
広いリビングはプラネタリウムと化していた…。
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