2007.12。公開開始。
このブログは み羽き しろ の執筆活動の場となっております。
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すべてが黒いリビングを彩る満天の星空。
唖然と見まわす海斗の視線の片隅で、大きな影がゆらりと動いた。
その瞬間。パッ、と、蒼い照明に切り替わり、星空は消えた。
あの不可思議な音だけは聴こえ続けていたけれど。
「ただ今戻りました。」
「おかえりなさい、紫朗さん。」
リビングの奥から声がする。
その声のする方に視線を向け、再び海斗は遠野の背中に寄り掛かる。
「な…なんでリビングにスポーツ・カー…。」
椿邸の広いリビングには、インテリアとして漆黒の車が飾られていた。勿論本物だ。
普通、グランド・ピアノとかじゃないのか…? ここ、超高層マンションの最上階だろう…。ぐったりと項垂れた海斗は盛大な溜息を喉の奥で噛み殺す。
だが、広さの割には物が少ない。目立った収納家具もなく、全体的にスッキリとしている。
扉から見て右側には6席の椅子が付いたカウンターがあり、見る限りはミニ・バーとなっている。その奥はコの字型のオール電化キッチンとなっており、リビング側からは中が見えない作りだ。
扉の正面の壁は一面ガラス張り。勿論防弾ガラスだろう。遠くにオフィス街にある高層ビルの明かりが散らばっている。
扉と扉の間にある壁にはスクリーンのような薄型テレビが掛けられており、室内のほぼ中央にL字型の7人掛けソファが大きなガラス・テーブルを挟むように2つ置かれている。すべて特注だろう。
インテリア代わりの車は奥の扉に向かって斜めに置かれており、その奥の壁にドアが一つ。掃除機などを置く物置のようなスペースらしい。
ダイニング・テーブルなどは見当たらないから、キッチンに置かれているのか、或いはカウンターを利用しているのか。それとも、食事などはプライベート空間で済ませているのか。この段階では海斗に解るはずもない。
よく見ると、車とソファの間にある広い空間に、大小様々なクッションが散らばっていて、その中に、カプセル型の家庭用プラネタリウムがポツンと置かれていた。
空間すべてが黒いので、目が慣れても何が置かれているのか認識するまでに時間が必要だった。
「その人が、俺たちと同居してくれる人?」
少し掠れたテノールが、リビングの奥から聴こえて来る。
車のボンネットに座っていた長身の男に、ふと、海斗は視線を止めた。
黒い空間に溶け込む人影が、ゆっくりと動いて海斗の目の前に立つ。
海斗は、思わず見惚れてしまった。
脚…長げーっ。
「ええ。今夜からでも同居させるつもりです。名前は東城海斗。」
「思っていたより若いね。」
「五月には28歳になりますよ。童顔なんです。」
「え、ほんと?」
「はい。海斗、二男の久秋さんだ。」
遠野の声に、海斗はビクリと肩を震わせた。
それまでの二人の会話も殆ど耳に入ってない。
「…え…あ…。」
「?」
「東城…海斗です。」
「うん。今聞いた。よろしく。」
「よ…よろしく。」
海斗の目の前に立つ戸崎久秋は、頗るイイ男だった。イケメンなんて軽い言葉では言い表せないような、飛び切りの男前。
浅黒い肌。彫りの深い顔立ち。髪も瞳も漆黒で、くっきりとした二重の眼元は、目尻がキリリとつり上がっている。そうとう気が強そうだ。
身長は伊達とそう変わらないだろう。ただ、細身だ。肩幅はあるが、身体全体に厚みがない。
黒い革のパンツに、黒い長袖のTシャツ。綺麗な鎖骨にブルー・カメオを結んだ革紐がゆれる。
椿の弟だと言ったら、誰もが信じるだろう。
椿と久秋は、雰囲気がとてもよく似ていた。
唖然と見まわす海斗の視線の片隅で、大きな影がゆらりと動いた。
その瞬間。パッ、と、蒼い照明に切り替わり、星空は消えた。
あの不可思議な音だけは聴こえ続けていたけれど。
「ただ今戻りました。」
「おかえりなさい、紫朗さん。」
リビングの奥から声がする。
その声のする方に視線を向け、再び海斗は遠野の背中に寄り掛かる。
「な…なんでリビングにスポーツ・カー…。」
椿邸の広いリビングには、インテリアとして漆黒の車が飾られていた。勿論本物だ。
普通、グランド・ピアノとかじゃないのか…? ここ、超高層マンションの最上階だろう…。ぐったりと項垂れた海斗は盛大な溜息を喉の奥で噛み殺す。
だが、広さの割には物が少ない。目立った収納家具もなく、全体的にスッキリとしている。
扉から見て右側には6席の椅子が付いたカウンターがあり、見る限りはミニ・バーとなっている。その奥はコの字型のオール電化キッチンとなっており、リビング側からは中が見えない作りだ。
扉の正面の壁は一面ガラス張り。勿論防弾ガラスだろう。遠くにオフィス街にある高層ビルの明かりが散らばっている。
扉と扉の間にある壁にはスクリーンのような薄型テレビが掛けられており、室内のほぼ中央にL字型の7人掛けソファが大きなガラス・テーブルを挟むように2つ置かれている。すべて特注だろう。
インテリア代わりの車は奥の扉に向かって斜めに置かれており、その奥の壁にドアが一つ。掃除機などを置く物置のようなスペースらしい。
ダイニング・テーブルなどは見当たらないから、キッチンに置かれているのか、或いはカウンターを利用しているのか。それとも、食事などはプライベート空間で済ませているのか。この段階では海斗に解るはずもない。
よく見ると、車とソファの間にある広い空間に、大小様々なクッションが散らばっていて、その中に、カプセル型の家庭用プラネタリウムがポツンと置かれていた。
空間すべてが黒いので、目が慣れても何が置かれているのか認識するまでに時間が必要だった。
「その人が、俺たちと同居してくれる人?」
少し掠れたテノールが、リビングの奥から聴こえて来る。
車のボンネットに座っていた長身の男に、ふと、海斗は視線を止めた。
黒い空間に溶け込む人影が、ゆっくりと動いて海斗の目の前に立つ。
海斗は、思わず見惚れてしまった。
脚…長げーっ。
「ええ。今夜からでも同居させるつもりです。名前は東城海斗。」
「思っていたより若いね。」
「五月には28歳になりますよ。童顔なんです。」
「え、ほんと?」
「はい。海斗、二男の久秋さんだ。」
遠野の声に、海斗はビクリと肩を震わせた。
それまでの二人の会話も殆ど耳に入ってない。
「…え…あ…。」
「?」
「東城…海斗です。」
「うん。今聞いた。よろしく。」
「よ…よろしく。」
海斗の目の前に立つ戸崎久秋は、頗るイイ男だった。イケメンなんて軽い言葉では言い表せないような、飛び切りの男前。
浅黒い肌。彫りの深い顔立ち。髪も瞳も漆黒で、くっきりとした二重の眼元は、目尻がキリリとつり上がっている。そうとう気が強そうだ。
身長は伊達とそう変わらないだろう。ただ、細身だ。肩幅はあるが、身体全体に厚みがない。
黒い革のパンツに、黒い長袖のTシャツ。綺麗な鎖骨にブルー・カメオを結んだ革紐がゆれる。
椿の弟だと言ったら、誰もが信じるだろう。
椿と久秋は、雰囲気がとてもよく似ていた。
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